蘭越町を取材
5月10日付けで蘭越町に以下に示す取材申込書を提出し、5月27日に取材をおこなった。その席には、町長、副町長、総務課長が出席した。
取材申込書は以下の通り。
2020年5月10日
蘭越町長 金 秀幸 殿
北海道磯谷郡蘭越町富岡1035-3
野村一也
090-4836-4467
取材申込書
私は、住民監査請求前の調査ないし研究のために、チセヌプリスキー場の施設売却について、取材を申し込む。
これまでの経緯
2018年、私は、蘭越町がスキー場施設を売却した有限会社JRTトレーディング(以下「JRT」)のチセヌプリの運用に関し、複数の批判的な意見を耳にしました。2019年の春頃、蘭越町に説明を求めると、副町長の山内勲氏が私の質問に答えてくれました。
山内勲氏は、JRTの排他的な運営に対し、複数の陳情が町にあったことに言及しながらも、それらの陳情を真摯に受け止める様子はありませんでした。そして、陳情するなら土地所有者である北海道にすべきであって、蘭越町は関係ない、といった態度でした。また、法的手段を持ち出した事業者がいたことを、まるで嘲笑するかのように私に話しました。
当時、私は、蘭越町がリフトを再開する前提で公募し、リフトの再開を条件にして売却したものと思っていました。それを、山内勲氏に確認すると、売買契約にリフトの再開が織り込まれていないことを私に伝えました。私が契約条件に入れなければ、費用対効果に劣るリフトが再開されるはずがないことを指摘すると、山内氏は、そもそも町はリフトの再開を条件としていない、と私に伝えました。
私が記すまでもなく、チセヌプリスキー場は道有林上のスキー場である。また、地方公共団体(蘭越町)の保有する施設で構成されていた。さらに、国定公園内に位置することから、高い公益性を有するものと考えられる。
その一方、ニセコへの投資が過熱していたことから、チセヌプリスキー場を安い費用で購入ないし独占的な使用ができるなら、インカムとキャピタルの双方で大きな利益が期待できると考える外国人事業者は少なくなかったはずだ。事実、当時に私が所属していた会社の担当者は、蘭越町に足を運び、説明を受けている。ただし、その担当者からは、「リフトの改修に2億円以上かかるから、投資しても元はとれない。だから、公募には参加しなかった」と聞いている。
山内氏との面談の後、私は、蘭越町に対し、当該施設の公募から契約にいたるまでの文書の公開を請求し、その内容を次のとおりwebページにまとめました。
2020年4月には、JRTの代表者と、SNS上でやり取りする機会がありました。蘭越町に提出した事業計画書において、2020-21シーズンに3億円をリフトに投資する予定となっていることを確認すると、JRTの代表者は答えなくなりました。SNSの当該現場を次のとおり。なお、抹消の恐れがあるので、当該現場はPDFで記録し、別添する。
ところで、前述のWEBページで指摘したとおり、JRTの収益予定表は、極めていい加減である。また、事業計画書で柱とされたスキーレッスンが行われることもなく、リフトが再開されるまでの暫定であるはずのCATスキーだけが実施されている。さらに、連帯保証人は、プレゼンテーションで予定されていたペック・クリストファー・マイケル氏から、事業実態があるのかどうかさえ疑わしい会社に変更され、蘭越町はそれを容認した。
質問
- 公募の前提について尋ねます。
- 蘭越町は、公募にあたって、リフトの再開を前提としたのか、しなかったのか。
- リフトの再開を前提とするのであれば、なぜ、契約条件としなかったのか
- リフトの再開を前提としないのであれば、費用対効果に劣るリフトが再開されないことを想定すべきであると思う。北海道と蘭越町との賃貸借契約は索道事業(リフト)の存在が前提となっているので、蘭越町がリフトなしのスキー場を行う事業者に売却するのであれば、予め北海道と協議をすべきではなかったか。
- 公募に参加する前の事業者に対する蘭越町の対応方法について尋ねます。
- 蘭越町への問合せは何社あったか。
- 蘭越町を訪れた事業者は何社あったか。
- 蘭越町を訪れた事業者の対応をしたのは誰か。
- 既に公開を受けた書類以外に、事業者に提供した書類はあるか。
- JRTはリフトの再稼働を事業計画書に織り込んでいるが、ほかにリフトの再稼働を提案した事業者はいるか。
- JRTが事業計画書で3億円の投資を事業計画として示したにもかかわらず、その投資を行われない場合について尋ねます。
- JRTが簡素なロープトウを設置することによって公益性を主張し、引き続き全山貸切り型のCATスキー主体の運営を継続する場合、町はそれを容認するのか。
- JRTが全山貸切り型のCATスキー主体としながら、朝1〜2回程度のCATによる搬送サービスを提供することで公益性を主張する場合、町はそれを容認するのか。
- 「チセヌプリスキー場譲渡にかかる申込概要一覧」を作成したのは誰か。
- 「契約者の地位の承継に関する契約書」の草案を作成したのは誰か。
所感
公有財産を民間に売却するのであれば、その購入を検討するものに対し、等しく公平に情報提供をすべきであることは言うまでもない。また、公有財産ならずとも、民間の金融機関や不動産業者が収益物件等を売却する場合には、レントロール等の事業収支が添えられるのは当然の作業である。しかるに、蘭越町がチセヌプリスキー場施設を売却するにあたっては、延利用人員が記されているだけで、具体的な収入が示されていない。また、費用についても、地代として70万円が示されているだけで、リフトをはじめとしたスキー場施設として運営費用はいっさい示されていない。このことは、リフトの再開を検討する事業者が必要とする情報の提供を、蘭越町が怠ったと言える。
もし、質問3の回答として、JRT以外にリフトの再稼働を提案した事業者がなかったとしたら、JRTが売却先として選定された理由として、リフトの再稼働を提案したことにあると看做されるべきであろう。実際、「チセヌプリスキー場の譲渡に係る提案評価表」中、運営等に関する評価は全体の35%を占めており、基本事項と並んでもっとも高い位置づけにある。また、そのなかには「リフトに係る将来プランはどうか」「町民も利用出来る計画であるか」という評価基準が含まれており、リフトの再開が評価基準とされていることは明白である。
私は、前述のJRTの代表者とのSNSでのやり取りを通し、私はJRTが事業計画書に示した投資をリフトに対して実施することがないと確信しました。そして、チセヌプリは投資効率に優れるCATスキーで運営され続けることになるだろう。リフトを動かしたら、安い搬送単価と高いオペレーションコスト、そして巨額の投資リスクを抱えることになるので、まともなリフトに対する投資がされることはありません。
私は、蘭越町がJRTから事業計画書の内容に対する進捗状況を確認することを求める。そして、もしJRTがリフトへの3億円の投資を約束せず、事業計画書には暫定的であることが示されただけのCATスキーで、排他的な全山貸切り型の営業をJRTが続けるのであれば、事業計画書に偽計があったと看做し、蘭越町はJRTとの売買契約を撤回するアクションを起こすべきであると思う。
なお、駐車場とスキー場の間の道有地を北海道から取得し、チセハウスの跡地と併せたなら、チセヌプリスキー場施設は、ホテルの付帯するスキーリゾートとしての売却が可能である。モイワスキー場で開業予定のアマンホテルと同程度の規模は確保できると思われる。開発事業者は、ホテルや不動産販売と管理の収益が見込めるので、リフトへの投資が見合うようになる。そして、リフトが再開されれば、バックカントリースキーヤーの1回利用も、日帰りスキーヤーや蘭越町民も利用できるようになる。
現在のJRTが行っている1日15人限定の全山貸切り型の高額なサービスは、限られた人した利用できないので、地域の振興に寄与するとは言えない。それどころか、JRTがスロープへの立ち入り禁止をしているので、バックカントリーの愛好家らがチセヌプリからの入山を敬遠する材料となっている。
蘭越町が上述の質問に回答する機会を設けてくれることを期待する。
以上
12月1日追記
取材の記録は、次の動画にまとめました。なお、録音は双方同意の上でなされたものです。