年間14万円で国の土地を借り、1日の77万円を売り上げるワイスCATスキー

ワイスパウダーCAT

旧ワイススキー場の壊れたリフトと事業者の賃貸部分

チセヌプリと同じく、ワイスホルンは、ニセコ連峰の山のひとつである。チセヌプリスキー場の敷地が北海道が所有する土地であるのに対し、ワイススキー場の敷地は、国の土地である。そして、国がHANANONOリゾート(香港のPCPD,日本でいうNTTのような通信大手企業)に使用を許可しているのは、リフト下(緑色の部分)とゲレンデの一部(黄色の部分)だ。

ワイスCATスキーの使用許可対象地

ワイスの図の黄色部分は、ゲレンデ全体をカバーしておらず、リフト脇の狭い部分だけであることに着目して欲しい。これは、使用許可の対象が、CATの走行が想定される部分だけとされていることが推定できる。

スキー場運営者であるHANAZONOリゾートは、使用許可を得ているのが、山(ワイスホルン)でも、スロープ全体でないにもかからず、チセヌプリ同様、『(山を)貸切』をキーワードとしてたスキー場運営を行っている。

そして、HANAZONOリゾートは、『(山を)貸切』とするために、CATの走行ルートの安全、あるいは、国から使用許可を得ているエリアへの出入りを管理するのではなく、使用許可を得ていないエリアを含めて、登山者が侵入を排除している。

HANAZONOリゾートがずるいのは、架線下と架線脇の一部の使用許可を得ているだけなのに、スキー場が「私有地」だと示していることだ。

HANAZONOリゾートの上原子ジェネラルマネージャーは、「ワイススキー場にゴンドラをつなげて、ワイススキー場を復活させる」とインタビューに答え、テレビは「日本ハーモニーリゾートは9年前にワイススキー場を取得~」と報じた。しかし、元ワイススキー場は、国定公園内にある国の土地である。日本ハーモニーリゾートは、壊れたリフトの所有権とCATの走行ルート部分の使用許可を得ているに過ぎない。その使用料は、年間146.400円である。また、元ワイススキー場は、公園事業としては、廃止届が出されており、スキー場事業は公園事業ではない。富裕層しか利用できない単価で収益事業であるCAT事業に関しては、国定公園内の国有地で、容認される事業とは思えない。

<参考>リフトが動いていたころのワイスのCAT運送

第3リフトが老朽化によって停止した後、2006年までリフト代わりのCAT(雪上車)が運行していた。CATは、リフトの代替なので、リフト券があればCATにも乗ることができた。2002年当時のリーフレットで運営形態と料金が確認できる。

ワイススノーパーク

ニセコワイス観光株式会社は、2006年にスキー場の営業を終了した。その後、スキー場の運営権(壊れたリフトや施設の所有権等の権利)を持つ東急は、その権利を花園エリアを豪州資本の日本ハーモニーリゾートに売却した。2007年に日本ハーモニーリゾートは、香港資本のPCPDに買収された。

  • 1971(S46)年12月25日 日本で2番目の国設スキー場として、国設ニセコワイスホルンスキー場が索道(リフト)2本で開設した。自然公園法上は「ワイスホルンスキー場事業」という事業名にて、ニセコ積丹小樽海岸国定公園内での事業が認可された。
  • 1973(S48)年までに、リフト5本での運営が開始された。
  • (年次不明) ニセコ山系観光開発公社は、5本ある索道(リフト)のうち3本とレストハウスを承継した。なお、ニセコ山系観光開発公社は、倶知安町、林野弘済会、ニセコ高原の三者でアンヌプリとワイスの開発を目的として組織された。
  • 1980(S55)年11月12日 5本ある索道のうち2本が、ニセコ高原観光株式会社に譲渡承継された。
  • 1981(S56)年1月12日 ヒュッテ・ワイスホルンは、神孝一氏に承継された。
  • 1973(S48)年6月19日 ニセコ山系観光開発公社は、ニセコワイス観光株式会社に名称を変更した。
  • 1978(S53)年11月27日 ニセコワイス観光株式会社からニセコ高原観光株式会社へリフト3本とレストハウスの事業承継が承認された。なお、2社の代表取締約は、ともに佐原亨氏である。
  • 1988年 ニセコワイス高原温泉山荘緑館がオープンした。
  • 1990(H2)年11月19日 スキー場事業の一部(第1・第2リフト)のスキー場公園事業の廃止申請が承認された。なお、ヒュッテ・ワイスホルンは、宿舎事業として変更承認されている。
  • 2001(H13)年10月10日 スキー場事業の一部(第3・第4・第5リフト)の廃止申請が承認された。申請者はニセコ高原観光株式会社。
  • 残存看板・web上の情報・複数の証言によれば、ヒュッテ・ワイスホルンは、CAT(雪上車)をリフトの代替として、スキー場運営を行った。第4・第5リフト側ではニセコワイススノーパークが運営され、最上部ある最初に壊れた第3リフト付近では、ふたつのスキー上のCATが競合する事態となっていたらしい。
  • 2004年 日本ハーモニーリゾートが東急リゾートから花園スキー場を買収した。
  • 2005年 ニセコワイス高原温泉山荘緑館は、ニセコワイス寶亭留に改称された。
  • 2006年 ワイス観光開発は、ニセコワイススノーパークの営業を終了した。
  • 2015(H27)年 東急リゾートが申請したスキー場公園事業の廃止申請が承認された。
  • 2015(H27)年 東急リゾートは、日本ハーモニーリゾートにスキー場を売却した。 
  • 2015(H27)年1月23日 東急リゾートは、日本ハーモニーリゾートへの事業終了
  • 2015(H27)年2月20日 日本ハーモニーリゾートは、スキー場公園事業の休止を申請した。休止期間に記載はなく、執行の協議として、自然第335号(昭和46年10月29日)、自然第812号(昭和48年6月19日)が記された。
  • 2013年 NACは、ワイスで貸切型のCATスキーを開始した。
  • 2018年 ニセコワイス寶亭留が閉館した。
国設ニセコワイススキー場(公園事業)の一部がワイスホルンスキー場に事業承継されたエリアを示す文書
国設ニセコワイススキー場(公園事業)の一部(後のワイススノーパーク)が事業承継されたエリアを示す文書
東急がワイススキー場を運営していたころのリーフレット
東急がワイススキー場を運営していたころのリーフレット

この記事は、自然公園法を所管する北海道自然環境局、土地を貸している北海道森林管理局からの公文書開示を待って、記事内容をさらに補充します。

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