蘭越町議会議員らに上申書を提出
蘭越町総務常任常任委員会での説明後、質疑応答において、永井浩議員は、「無責任」「非難中傷」と陳情人を批判した。また、「告発したほうがいい」「裁判所に行ったほうがいい」「告発状を出せ」などと、陳情の適格性を否定し、司法機関に行くことを陳情人に求めた。隣席の熊谷雅幸議員は、大きく頷くことで永井議員への同意をアピールした。そして難波委員長は、オブザーバー参加である永井議員が「告発せよ」と繰り返すばかりの『自己主張』を容認する一方、陳述人に対しては「議論する場所ではない」と反論を遮った。
説明の8日後、陳情人は、上申書を蘭越町議会議員らに提出した。
文書開示請求および常任委員会への上申書
2021年7月8日
蘭越町議会議長富樫順悦殿
蘭越町総務文教委員会委員長難波修二殿
蘭越町議員各位
北海道磯谷郡蘭越町富岡1035-3
野村一也
文書開示請求書兼蘭越町議会総務文教常任委員会への上申書
一 対象となる総務文教常任委員会
1 場所と事件
蘭越町議会総務文教常任委員会(2021(R3)年6月30日午後1時30分開始)
2 出席者
総務文教常任委員会 委員長:難波修二 副委員長:向山博 委員:富樫順悦 委員:桝谷要 委員:田村陽子 | 経済建設常任委員会(オブザーバー) 委員長:永井弘 副委員長:赤石勝子 委員:熊谷雅幸 委員:金安英照 委員:淀谷融 |
3 当該常任委員会の内容
2021(R3)年2月12日付けで野村一也(以下「陳情人」という)が陳情した『チセヌプリスキー場の売却にかかる入札談合行為と背任疑惑の真相究明を求める陳情』(以下「本陳情」という)について、蘭越町議会が総務常任委員会(以下「委員会」という)に本陳情の審議を付議したことによって開催された。なお、当日の具体的議案は、本陳情のみであった。
二 開示請求の内容
本陳情において、陳情人の録取を拒絶し、事務局だけが録取した音声記録の即時開示を求める。なお請求の背景は、「本上申および本開示請求の背景」の甲に記載する。
三 蘭越町総務常任委員会への上申
難波修二委員長に対し、永井浩議員が陳情人を「無責任」「ただの非難中傷」とした発言について、その取り消しと総務常任委員会としての謝罪文書を求める。
四 永井発言の違法性
永井浩議員が陳情人に向けて発言した「無責任」「ただの非難中傷」をはじめ、その多くの言動は、本陳情の品格のみならず、陳情人の名誉や信用を低下させるものであり、国家賠償法1条1項の規定する「違法な行為」に抵触する可能性がある。
なお、事務局の和田氏は、説明期日後の陳情人との通話において、疑惑段階での報道を「無責任」と言い放った。陳情人は、和田氏を追及して謝罪させたが、永井浩議員の影響があったことを推察する。
五 本陳情の意義(議会がなすべき行政機関の監視を代行)
本陳情は、本来、町議会または町議員がなすべき公有財産の処分にかかる執行機関の不正監視を、町議員に代わって陳情人が無報酬で行い、それを議会に報告しているものである。
なお、告発は、捜査の端緒となるものに過ぎず、捜査に代わるものではない。告発段階では、疑惑を指摘するに足る証拠が示される。そして、告発が受理され、捜査が開始されれば、疑惑を補完する証拠が捜査機関によって収集されるものである。それゆえ、告発人に立証責任があるかのように主張した永井議員は刑事司法の基本さえ理解していないと言わざるを得ない。
また、公人の公務における不正疑惑が報道される場合において、個人情報保護法上の問題はなく、実名報道が基本である。陳情人がweb媒体および紙媒体において、金町長や山内副町長らの不正疑惑を実名で記すにあたっては、客観的な証拠に基づいて構成された文章となっており、陳情人の『主観だけ』で示された箇所は一文さえも存在しない。
不正疑惑を報道するために、証拠集めとその整理にどれほどの労力がかかるかを推し量ろうとせず、語尾だけを断片として取り出し、それをもって「無責任」「ただの非難中傷」と評した永井浩議員の言動は、憲法13条の目的を達成するための「報道の自由」を否定するものであり、到底容認できない。
陳情人が取りまとめた情報をweb媒体および紙媒体に公開するのは、説明の冒頭にも説明した通り、事実がきちんと公開され、それを見たい人に公開される状態にあることが、秩序逸脱(犯罪を含む)の抑止効果につながるからである。
刑事司法の場で白黒が決まった後の見せしめで得られる秩序よりも、事実が一定の公然性を持つことによる抑止効果で生じる秩序のほうが、成熟した社会にとって望ましく、かつ、合理的であることを、陳情人は信じている。
六 補足説明
1 町議員の責務(二元代表制)
蘭越町に限らずすべての地方自治体は二元代表制を採っている。その目的は、抑制と均衡によって緊張関係を保ちながら、議会が執行機関と対等の機関として、自治体の運営の基本的な方針を決定し、その執行を監視することにある。
なお、全国の市町村議会を見渡せば、本会議や委員会に出席するだけでなく、議事以外の時間で、公金支出やその他の不正を監視する議員は少ないながら存在する。
2 蘭越町議会の透明性について(議事の公開・記録の保持方法と公開方法)
陳情人が説明したように、蘭越町が星野提案を断った件において、山内総務課長(当時)は、議事録の残らない町議会全員協議会で、あたかも複数の町議員が「星野リゾートを断って、町営施設を建設することが良策」との意見があったとして、お断り文を起案したことが記録されている。
記録の残らない協議会での議員発言をもって、執行機関が「民意の後押しがあった」と処理することの適否はさておき、議会としては、記録の残らない協議会が執行機関に都合よく利用されないように配慮すべきであろう。
参考までに示すと、今から17年前の2005年、「第28次地方制度調査会 地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申」で、議会の監視機能について、次の指摘がなされている。
「地方自治体の自己決定権の拡大に伴い、議事機関である議会の政策形成機能の充実が求められているほか、地方分権の推進に伴い、地方自治体の役割が拡大し、また住民への説明責任を果たすことがますます重要となっていることから、執行機関に対する監視機能についても、その一層の充実強化が必要と考えられる」
倶知安町やニセコ町では、○○推進計画や□□総合計画といった一般町民の意見しにくいものだけでなく、新庁舎の建設等の一般町民にわかりやすい事業でパブリックコメントを募集している。公募内容の事前公示や公聴会も実施されている。
一方、蘭越町が星野提案の不承諾やチセヌプリの売却先の選定については、広報されたのは事後の決定事項ばかりである。パブリックコメントどころか、公募提案の内容さえ公示されなかった。
チセヌプリスキー場と雪秩父の運営方法が検討されたはずの「国民宿舎雪秩父改築等検討委員」の議事録はあきれるほどに内容が乏しく、5年の保存期間を超えたものは次々に廃棄されている。
休日、夜間の議会開催やインターネットの利用などにより積極的に議会の審議の公開や広報活動を行うなど、新しい時代の議会に期待される機能を発揮すべく、さまざまな積極的取組をもって議会改革に取り組んでいる議会もあるなか、蘭越町議会のやり方が時代の要請に即しているかどうか、真摯に見直すべき時期をとうに過ぎているように感じられてならない。
七 本上申および本開示請求の背景
1 蘭越町議会に対する文書開示請求の打診
- 2013(H25)年、星野リゾートの温泉ホテル提案を蘭越町が断ったことについて、町長らは「蘭越町議会議員の意見」をお断りの根拠とした。その事実を確認するために、蘭越町議会に対し、総務常任委員会と町議会全員協議会の議事録の公開を請求した。
- 宮谷内町長(当時)の発言記録(2013年6月10日)によれば、「総務常任委員会で検討することになっている」とのことなので、議会事務局に2013年6月の総務常任委員会の記録を求めた。しかし、議会事務局福原事務局長は、5年の保存期間を超えたので残していない、と言った。
- 山内総務課長(当時)が起案した星野リゾートへのお断り文書の送付を起案する文書においては、6月24日の町議会全員協議会で町議員の意見を聞いた、とされているので、その記録を求めた。しかし、議会事務局は、やはり「記録はない」という。そもそも、町議会は、「町議会全員協議会の議事録をとっていない」とのこと。
- つまり、山内総務課長(当時)は、議事録の残らない町議会全員協議会において、あたかも複数の町議員が「星野リゾートを断って、町営施設を建設することが良策」と意見したことを理由に、お断り文を起案したことになる。そして、山内氏は、町長名で送る文書において、議員の意見を『多くの町民』の意見として扱っている。
2 委員会の公開ないし透明化に対する事前協議
- 開催期日前、陳情人は、委員会の公開を求めたが、委員会は拒否した。
- 開催期日前、陳情人は、自分が説明する様子を動画に記録することを求めたが、委員会は拒否した。
- 開催当日、陳情人は、公平性を保つために、委員会が録音するなら、陳情人も録音することを求めたが、委員会はそれを拒否した。
3 委員会における陳述人の説明時間に対する事前協議
- 開催期日前、委員会は、事務局を通じて、説明に30分、質疑応答に30分の時間割りを提案した。
- 陳述人は、審査請求における説明が1時間を要したことから、1時間、最低でも45分を求めた。
- 事務局は、説明時間の延長に関する委員会の回答を明言しなかった。
- 開催当日、難波委員長は説明と質疑応答を合計1時間で終わらせたいと発言した。
- 田村議員は、時間が経ったからといって意見を終わらせないよう求めた。
- 陳述人は、説明時間の延長を再度もとめた。
- 委員長は、説明を30分で区切らないが、疑応答まで含めて1時間との予定を変えなかった。結果、陳情人は、省略または早口での説明を余儀なくされた。
以上