審査請求の結果
裁決書より抜粋
主文
本件審査請求を一部認容し、令和2年11月11日付け蘭観号で、行った公文書非開示決定を変更し、審査請求人に対し速やかに公文書一部開示決定を行う。
理由
1 審査会の判断
(1) 提案書における条例第9条第1号の該当性について
条例9条第1号では、「法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等j という。)に関する情報及び事業を営む個人の当該事業に係る情報であって、開示することにより、当該法人等及び当該事業を営む個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が不当に損なわれると認められるものJは開示しないことができる非開示情報と規定されている。
当審査会が、諮問実施機関から提示のあった提案書を見分したところ、その内容は主に、当該法人等の概要・紹介、スキー場経営及びそれに付随する企画提案、収支計画、当該法人等の登記情報となっており、文書の外、当該法人等の社印、ロゴマーク、写真等で構成されていた。
譲渡先以外の法人等にあっては、当該法人等の企画提案が町に選ばれなかったという事実は、その法人等の企業イメージを低下させるものであり、当該法人が特定される情報については、法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められることから、提案書のうち、当該法人等の概要・紹介、当該法人等の登記情報、当該法人等の社印、ロゴマーク等は非開示情報に該当するものであると判断する。
また、写真等については著作物で、あることから、それについても非開示情報に該当するものである。
また、スキー場経営及びそれに付随する企画提案、収支計画においては、その記載内容は定型化されたものではなく、法人等ごとに異なるものであり、各法人等の企業秘密やノウハウ等が含まれるものと認められ、公開した場合、他社が労せずしてそのノウハウを入手可能となり、提案した法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められる。
すなわち、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものが含まれていることから、条例第9条第1号の規定により、非開示情報に該当するものであると判断する。
ただし、提案書のうち、チセヌプリにおけるスキー場の運営については、チセヌプリという地域に限定した企画提案であり、その部分については、他社がチセヌプリ以外の地域で活用できるものではないこと、また、スキー場の運営に付随するホテル経営などについては、当該法人等ごとに提案方法が異なるが、一部の法人等の提案書では、その記載は一般的・抽象的なものもあり、それについては非開示とする明確かっ合理的な理由があると認められないことから、その部分については非開示情報に該当するとは言えない。
(2 ) 提案書の著作権について
実施機関は、「法人等の提案については、それぞれの法人等の著作、特許、意匠といった権利があり、そこに企業としての利益もあるもので、その権利は保護されるべきものであるJ旨の説明をしている。
著作権法第18条第1項では、「著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(中略)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。j こととしており、著作者は、その著作物を公表するか否か、公表するならばその時期をいっとするかを決する権利、すなわち公表権を有している。
ただし、同条第3項第3号では、著作者が、「その著作物でまだ公表されていないものを地方公共団体(中略)に提供した場合Jには、「情報公開条例(中略)の規定により当該地方公共団体の機関(中略)が当該著作物を公衆に提供し、又は提示することj に「同意したものとみなす。」こととしているが、同号では、「開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。Jとも規定している。
実施機関の説明によると、不採用になった際は提案書を回収したいとの申し出をした法人等が1社あったこと、また、審査会の提案書の見分により提案書自体に「関係者以外閲覧禁止、複製・転用・引用禁止j を明記した法人等が1社あったことが確認された。
これは、企画提案書を非開示とすべきとの意思が示されたものであり、これらの意思は、著作権法第18条第3項第3号に規定する「別段の意思表示Jに当たるものと認められることから、各著作者(法人等)は、同号に規定する「情報公開条例(中略)の規定により当該地方公共団体の機関(中略)が当該著作権を公衆に提供し、又は提示することJに「同意したものとみなす。」ことはできない。
よって、同条第1項に規定する公表権は、依然として各著作者が有しており、かつ、その著作物である企画提案書は、し\まだ非公開とされているものである。すなわち、この2社の提案書には、著作権法の規定により、「法令文は他の条例の規定等により公にすることができないと認められる情報」が含まれていることから、条例第9条第1号の規定により、非開示情報に該当するものである。
なお、意思表示がいまだされていない法人等の提案書については、実施機関に一定の権利があるものとして、その非開示部分について判断している。
(3 ) 申込概要一覧について
申込概要一覧は、当該法人等から提出された提案書の概要を町において一覧化したものである。
これは、提案書とは違い、法人等の著作権が及ぶものではないと判断されることから、条例第9条第1号の該当しない部分は開示されるべきである。
申込概要一覧において会社名を除く部分のうち、代表者、住所についての情報は開示することで当該法人等が特定される恐れがあること、また、資本金の情報は会社内部の情報であり、一般的に公開されているものではないことから、非開示情報に該当すると判断する。
また、運営提案等の情報については、その内容は抽象的なものであることから、この情報を以て当該法人等へ不利益をもたらすものではないことから、町の説明責任を果たす上でも開示されるべきものであると判断する。
2 結論
審査庁の判断は、審査会の答申を踏まえ、本審査請求には理由があることから、主文のとおり裁決する。