関温泉スキー場と町営チセヌプリスキー場
自己責任で滑る小規模スキー場
チセヌプリが町営スキー場だったころ、他のスキー場にいるようなパトロールは配備されていなかった。それゆえスキーヤーは、自己責任で滑ることが求められ、そして、自己責任で行動することを学んだ。チセヌプリスキー場のユニークさは、スキー場の存続を求める署名活動の新聞記事を参照してほしい。
町営チセヌプリスキー場とよく似たスキー場として、妙高エリアの関温泉スキー場があげられる。
ハートウォーミングな関温泉スキー場
町営チセヌプリスキー場と関温泉スキー場は、どちらも積雪量に恵まれた、歴史のある小規模スキー場である。近くにある巨大スキーリゾートの陰に隠れがちであるが、根強いファンがいる。そして、どちらのスキー場もすぐ近くに温泉が沸いていることなど、共通点は多い。
また、関温泉も自己責任で滑るスキー場であり、専任のパトロールはいない。コースロープもなく、救助要請があればリフト係が出動する体制となっている。
レッドブルが関温泉スキー場と、すでに廃止された燕温泉スキー場を舞台として作成した興味深いショートフィルムがある。
オープニングの古いリフトは、関温泉スキー場のもの。雪深い温泉街の様子の後、赤倉観光リゾートスキー場から燕温泉へ滑り降りるルートが紹介される。関温泉スキー場の本編は、神社の映像の後だ。
このショートフィルムは、「(雪質世界一なのに)日本のスキー場は衰退を続けるのか?」がテーマとされている。まず「70-80年台に1800万人いたスキーヤーは減少を続け、800あったスキー場は、200-300に減った」と時代の移り変わりが示される。そして、パウダースノーのなか、燕温泉スキー場跡に滑り降りる映像が示される。それは衰退することへの心惜しさが表現されているようだ。
関温泉スキー場は、井上幹夫社長とその家族が経営している。1日券が3800円で、社長が切符をきったり、食堂で皿洗いをしているようなので、経営的に楽ではないだろう。しかしながら、スキー場のハートウォーミングな雰囲気は、映像からも伝わってくる。
井上社長が次の世代にバトンを渡すことによる、スキー場存続の可能性が示され、それがエンディングとなっている。
他人の財産のパトロールに公費を使う蘭越町
チセヌプリスキー場の話しに戻ろう。
売却後、国定公園ないの道有地であるにもかかわらず、チセヌプリスキー場が閉鎖的なCATスキーが運営されていることに対しては、古くからの利用者のみならず、BCツアー事業者や宿泊事業者からも不満の声があがっていた。そして、複数のツアー事業者らが、蘭越町に対し善処を求めたが、蘭越町は、ツアー事業者らの不満を取り合わなかった。
ツアー事業者のひとりは、立ち入り禁止の理由は雪上車との衝突防止なのに、雪上車の走らないスロープも含めたすべてが立ち入り禁止とされていることに不満を覚え、SNS上でJRTのカナハン氏を直接非難する映像を投稿した。(後に、カナハン氏は、そのツアー事業者を相手に、損害賠償請求を提訴している。)
そして、2016-17シーズンに「今シーズンのみ」として行われた公費によるパトロールは、2021シーズンも継続している。
町営スキー場だったころにパトロールはなかったのに、民間企業に売却して後で、なぜパトロールに公費を使う必要があるのか、蘭越町に質問した。
蘭越町への質問とその回答
「チセヌプリスキー場安全指導員」は、町有車のガソリン代や町営施設の除雪費と同じ分類『財産管理費』のひとつとして支出されている。詳しくは、公文書を参照してほしい。
2021年1月14日、最初のチセヌプリスキー場安全指導員支出を起案した山内副町長に次の質問をした。
「町の財産でもないのに、なぜ町のお金を使う必要があるのか?」
山内副町長は、「チセヌプリスキー場の権利譲渡に付随する覚書」に基いていると主張するので、取材後、その文書を確認した。
覚書には、3に安全管理に関する項目が存在する。
しかし、それは丙、つまりJRTが行うこととなっており、蘭越町が負担する根拠にはならない。
淘汰される長野とバブル景気のニセコ
関温泉スキー場と元町営チセヌプリスキー場との間には、周辺景気の状況に大きな違いがある。長野県のスキー場は、首都圏にもっとも近い白馬に再興の動きがあるのものの、アクセスに劣る妙高エリアのスキー場は利用者の減少に苦しんでいる。一方、チセヌプリスキー場が売却される際、周辺はバブル景気に沸いていた。
私には、排他的運営への不満と、売却方法への不信を緩和するために公費が使われているようにしか見えない。