パウダーサーフィン
大ケガの対応として選択したスノースケートでの基礎練習の結果、中斜面までなら概ねスノースケートで滑ることができるようになった。エッジが食い込む雪面なら、バインディングフリー (Binding-free) を感じさせないターンもできていると思う。それらスノースケートの経験から、バインディングフリーはスノーカイトで有効であることを感じていた。そして、JSBAの大会後は、スノーカイトを楽しむ予定だった。
カイトを揚げた状態でバインディングからブーツを脱着することは、大きなストレスだ。2アクションのSPユナイテッドと1アクションのFLOWを持っているが、脱着のストレスに大差はない。もし、 バインディングフリーが可能なら、楽しさ倍増は必至だ。スケートボードに飛び乗るように滑り出せるからだ。
スノーカイトでバインディングフリーの板に乗るメリットはもうひとつある。それは、足の位置を容易に変えられることだ。それによって、雪の状態に応じた快適な位置に乗れるようになる。これは特にパウダースノーの時に大きな利点となる。
そして僕は、 パウダーで使えるバインディングフリー(Binding-free)の板を探した。ここで、 バインディングフリー板のカテゴリーを整理しておこう。
パウダーサーフィンの板
あれこれ調べると、どうやら パウダーでバインディングフリーの板に乗る文化は、日本が先行してたようだ。五明淳氏のMAKE雪板をはじめ、いくつかの工房で制作されている。販売目的のほか、ワークショップも各地で開催されている。北海道美深町では町を挙げてスノートイ(雪板)の制作体験が行われている。
札幌のセカンドアウトドア川添店でいくつかの雪板を見ているときに、GRASSROOTSの板が目に留まった。日本の雪板が手作り感あふれる”スノートイ”であるのに対し、 GRASSROOTSの板の質感は高かった。詳しく調べてみると、3D形状のモデルがあることに気が付いた。この形状は、スノーカイトで板を立てての直進する際にうまく機能しそうだ。
GRASSROOTSは想定していないようであるが、ディープパウダーでのスノーカイトに最適な板だと思う。
ひとつ気になるのは、方向転換の時に身体の向きを変えるか、あるいはトゥエッジでアップウインドする必要があることだ。そこでぼくは、新しい板を買う前に手持ちのツインの板をバインディングフリーに加工してみることにした。
ツインチップの板にバインディングフリー加工
元の板はK2 GYRATOR。ロッカーボードが一般的でなかった時代にロッカーどころか逆ぞり形状を採用したパウダーボードだ。これに滑り止めを貼り付けた。
黒いシートはウレタンスポンジ。所有するHOVLANDで効果は確認ずみ。比較のために、進行方向が変わったときにはグリップシートに乗るようにした。
さらなる試練
夜な夜な楽しい妄想を繰り返していたある日、僕はスノースケートでひどい怪我をした。 靭帯が切れる音がしたこと、その時の態勢、そして直後の症状から、前十字靭帯の断裂を確信した。ネットで調べると、再建手術と半年程度のリハビリが必要らしい。
試練を乗り越え、これから楽しい冬が始まろうしているのに、また絶望の淵に突き落とされた気分だ。しかしながら、手術を覚悟して、病院でMRIを撮ると、ドクターは「靭帯は切れていない」という。「じゃあ、あの音は何…?」という不安は残るが、不幸中の幸いを信じよう。うまくいけば3月にも、緩くならスノーカイトに乗れるくらいまでに回復できるかもしれない。
しかし1年足らずの間に3度の大ケガは、自分でもやり過ぎだと思う。肩腱板断裂、胸椎圧迫骨折につづく今回の話しをご近所のHさんにすると、ケガを気遣う言葉が出てこないほどに呆れていた。
でも僕は、傷が癒えたらきっと、同じような危険を冒してしまうことだろう。