UTグループへの理不尽な対応
UTグループが断念した理由
2015年4月にUTグループが応募し、およそ半年間後の11月に譲渡は決裂した。その原因は、11月2日にUTグループが山内副町長宛て送ったemailに示されている。
標記につきまして、 当社は平成27年4月2日付けで、以下の蘭越町ウェブサイトに記載された条件をもとに譲渡金額5000万円で譲渡希望者として応募しています。
http://www.town.rankoshi.hokkaido.jp/topics/2015/03post_193.html
(添付ファイルご参照)
公募条件の中で特に重視したのが、「譲渡金額以外の負担(保証金等)は一切無し」との条件でございます。この条件から、北海道から要求されるスキー場の原状回復義務について連帯保証を蘭越町様が行うものと理解しておりました。つまり、蘭越町様が連帯保証人となる条件は公募条件の中で極めて重要かつ大きな要素であります。
また、譲渡時点で、譲渡主休法人と別途法人で連帯保証を行うことの実質追加負担がない前提で全ての事葉計画を策定しておりました。
実際今年の6月時点までは、蘭越町様が通帯保証人となる前提で画越町様は北海道と交渉していたと蘭越町様関係者より口頭で報告を受け確認をしております。
2015年10月22日 UTグループ代表が山内総務課長(現副町長)に宛てたemailより抜粋
しかし、財政援助制限法第3条によれば「政府又は地方公共団休は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができない」ため、新たに連帯保証先を見つける必要が生じたと認識しております。
上、UTグループの打診に対し、山内総務課長(現副町長)は、継続協議の中止を通知する文書を起案した。山内氏が起案した通知は、金副町長(現町長)と宮谷内町長の承認を経て、宮谷内町長名でUTグループに送られた。その文書を受けたUTグループは、譲渡を断念する文書を蘭越町へ送った。
当社としては、以下に示すように、公募条件が大きく変化し、その変化にともなって経済的合理性から見て極めて妥当な要望をしたにもかかわらず、蘭越町様からのご回答がその要望に 事実上まったく対応していただけなかった点は大変遺憾に思います。
1)当初の条件:公募条件の中で「譲渡金額以外の負担(保証金等)は一切無し」 となっており現状回復義務についての連帯保証は蘭越町様がなっていただく
2)最新の条件;現状回復義務についての連帯保証は当社グループまたは別会社がおこなう1)より2)は実質的な経済負担が当社にとつて最低でも5000万円拡大するため (現状回復義務をいつでもおこなえる財政余カを北海道様に示す必要があるため)、 負担増について蘭越町様に対して譲渡金額の引き下げ等を要望
2015年11月2日 UTグループ代表が山内総務課長(現副町長)に宛てたemailより抜粋
正式な記録にされなかったUTグループとの面談
上に示したメールのほか、開示された文書におけるUTグループとの交渉記録は、脈絡が不完全だった。
2015年10月20日、唐突に蘭越町がUTグループの依頼を断る内容から始まり、10月22・23・27・26日のやり取りを経て、11月2日で完全な決裂となっていた。
- 2015年4月2日の応募当時JASDAC上場、同年秋に東証1部上場するUTホールディングス株式会社(以下「UTグループ」という)は、32ページに及ぶ提案書を添えて、公募に応募した。そして、山内勲らは、UTグループとの交渉を始めた。≪甲3≫≪甲4≫
- 山内勲らは、UTグループに対し、公募条件にない連帯保証人を求めた。
- 2015年10月18日、UTグループは、公募条件変更(連帯保証人追補)を理由に譲渡金額の減額を求めた。≪甲41≫
- 2015年10月20日、蘭越町はUTグループの減額要請を断った。≪甲7≫
- 2015年10月22日、UTグループは譲渡価格の減額を再要請した。≪甲8≫
- 2015年10月23日、山内勲は、UTグループの譲渡価格の減額再要請を断ることを起案し、金秀行もそれを承認した。≪甲9≫
- 2015年10月26日、蘭越町は、UTグループの譲渡価格の減額要請を断った。≪甲10≫
- 2015年11月2日、UTグループは、スキー場の譲渡交渉の白紙撤回を申し出た。≪甲11≫≪甲12≫
そのプロセスにおけるUTグループの文章には、紳士的な論調に留めようと努力しながらも、蘭越町が後から連帯保証人の追補を条件としたことに対する、隠しきれない不満が溢れている。
そこで、蘭越町が公開した文書に含まれなかった10月20日の文書を再請求した。そうして10月18日の記録を取得した。その記録は、UTグループの社長らが、蘭越町役場を訪れ、町長・副町長・総務課長と話し合いのリライト文だ。全文はPDF(2.9MB)
非常識な条件変更とパワハラ紛いの無礼な対応
そのなかの一部を次に抜粋した。そこには、蘭越町が連帯保証人の追補を求めたことに対し、UTグループが苦慮しながらも、蘭越町に譲歩を求める様子を窺うことができる。
ここに保証金なしとあったので、蘭越町さんに残ったままなのかな、という認識だったんですよね。ただそれが、契約上、保証人を立てて移さなければいけないという状況になったのは、後から聞きました。最近ですよ。なので、説明に困惑しているのは、事実です。つじつまを合わせるための何らかの集客のご支援であったり、いろいろな契約上の手続きとか、なにかしら説明しないとですね。これで契約がご破算になりました、というのは、尚更鋭明がつかないという話しで、それは困るな、という感じがしていますので、逆に、可能なところがあれば、教えていただければ、それで説明できるかどうか、早々にご回答申し上げることができる〇〇がつくれるんですけれども、ちょっと脱明がつかないですよ。我々も、かなり時間とコストをかけてやってきていますから。これは何故断られたのか、蘭越町に、なぜ契約がご破算になったんだ、ということについて…
UTグループ社長
「売ってやる立場にある」と勘違いしている権力者は気付かないのかもしれないが、交渉開始から半年も経った後で、連帯保証人の追補を求める行為は、きわめて非常識だ。
なお、2014(H26)年5月9日、当時総務課長の山内は、後志総合振興局森林室藤田管理課長と協議した(当時の記録)。その際、蘭越町が賃借権を承継し、北海道と民間企業との間で賃貸契約を結ぶ場合には、連帯保証人が必要との条件を共有した。このことは、蘭越町が契約条件に連帯保証人の要否を明示せず、後から連帯保証人を求めたことが、蘭越町の過失であることを示している。ところで、2014年当時の協議で、財政援助制限法第3条の規定により地方自治体が連帯保証人になれないことを藤田も山内も知らなかったことは、北海道と蘭越町(行政側)の問題である。
契約間際になって蘭越町が非常識な条件変更を持ち出したにもかかわらず、それを指摘されると、「公募条件の言葉尻をつかまえて~」「(文句を言うなら)無かったことにしましょう」という論法で、UTグループの不満を封じ込めようとしている。それを町長・副町長・総務課長の3人がかりでやっているのだから、UTグループの臥薪嘗胆は、想像に余りがある。
UTグループは、圧雪車の注文のほか、多くの時間的・人的投資をしていたようなので、いまさら取りやめはできない状況にあったようだ。一方、蘭越町が契約を白紙にしても、大した痛手は発生しない。それどころか、町長がUTグループに明言した「次の候補」に譲渡先を変更したい『特別な理由』が、この時点であったのかもしれない。
その他、蘭越町長らの不誠実で不躾な対応
記録において、宮谷内町長は、自分を「オレ」と称し、UTグループの社長を「お宅たち」と呼んでいる。そのほか言葉遣いの品のなさは、蘭越町民として恥ずかしい限りだ。具体的な協議においても、蘭越町側の発する内容は、非礼かつ冷徹な対応に終始している。以下、そのいくつかを以下に抜粋した。
宮谷内町長
それはお宅たちの会社の都合で言ってるけれど、うちのほうはそんなの関係ないんだから。総務課長が言ったように、それをこうだああだというふうなことであれば、これは最初から契約が無かったものとして、我々も議会に報告するし、次の候補も来ているんだろう。
それは契約もしていないんだからやめるのは自由だし、外国の方に話を掛ければやってくれるところはいくらでもあるよ。最初からこううまくいかないんだったら、これは我々が議会に怒られてでも報告して白紙に戻してもらうより方法はないね。
我々はここでユーティーホールディングが買うといったから議会に報告して、その辺りに来ているのがこっちは真剣にやりそうだというから言っていることであって、そんなお互いに迷うことであれば、これは契約しているわけでもないし、契約しているのであれば、信義誠実の原則で、契約には書いていないことであれば、お互い協議してやればいいことで、出だしからこういうことどうだ、ああいうことはどうだ、というのであれば、この際はっきり言ってどうしようもないことだ。
山内総務課長
僕はこの一番最初に●●●さんが言われたように、公募条件の言葉尻をつかまえて、負担保証金は一切なしというのは、先ほど町長が言ったように、担保してもらうお金は要りませんよ、という認識の条件であって、撤退したときのお金を積めとか、あるいは、負担しなさい、ということは、もちろん考えていませんし、そういうことの言葉尻をつかまえて負担が増えたから譲渡金額を安くしろというのは、我々として侵害だし、本当にユーティーさんでよかったのかという気持ちになりますから。
北海道さんからはリフトを設置したのは蘭越町だから、何かあったときに蘭越町さんが最終的な責任をもしも何か会社が逃げたりすると最後、蘭越町さんが負わなければならないよ、ということは言われています。最初から。そうゆう意味で、蘭越町は何かあったときの最終責任はとらなければならないと思いますけれども、そもそも、やる会社さんが最初から逃げる気でやるとは思っていませんし、それは最悪の場合であって、仮にそうした場合にあっても当然蘭越町が一旦譲渡するものですから、それは道に対しては責任があるとは思っていますけれど、最後に責任を負うとまでは、蘭越町は思っていませんでした。
譲渡した後に何かあったとき、なにかで経営が続けられなくなったときの撤去責任はどこにあるんあるんですか。蘭越に被せるという事ですか。それではないですよね。
蘭越町が排除したもの
UTグループの提案は、誰もが利用できる料金でのスキー場運営であった。夏のアクティビティを合わせて、年間9万人を目標としていた。
サービスそのものの料金は安く設定し、集客規模を多くすることが、地域振興のセオリーである。間接的な経済効果が見込めるからだ。逆に、高価格で集客数が少なければ、地域振興にはならない。
蘭越町に理不尽な条件を突きつけられ、ハラスメントまがいの不躾な対応に耐えながらも、UTグループの社長は、新たに発生する連帯保証人を依頼する費用をUTグループが負担し、譲渡価格の値下げもあきらめてもよいと譲歩したことが、10月18日の記録に残っている。その代わり、せめて集客面で協力してほしいという依頼は、費用面ではなく、利害関係者に対する説明責任から生じた依頼のようである。
それを蘭越町が冷たくあしらった結果、UTグループは撤退を余儀なくされた。10月22日から11月2日までのUTグループからのemailからは、白紙撤回が断腸の思いであることがうかがわれる。