雪のち晴れの八甲田
桜の開花が始まった3月下旬、僕は青森に行くことになった。風力発電を設置する土地をさがすためだ。ビジネスパートナーとの待ち合わせ場所は、青森市内の予定だったのだけれど、待合せの前日夜、むつ市内のホテルに変更になった。
当日の早朝、青森駅から青森鉄道に乗り、野辺地(のべち)でベイサイドライン大湊線に乗り換えた。汽車(ディーゼルエンジンの気動車)は、1両編成だった。運転席は小さく区切られており、バスのように前方の窓から進行方向を臨むことができる。
ガタゴトと懐かしい音を響かせ、窓の外では海がのどかに流れていく。
待ち合わせ場所にやってきたのは、オーストラリア人の投資家Cさんとニュージーランド人の実業家Iさん。彼らのクルマに同乗し、まず、横浜町に向かった。横浜町はむつから下北半島の中ほどにあり、その近隣には、陸奥湾からの風が吹き、多くの風力発電所が存在する。目的は、今後の土地開発の参考のために、既存の風力発電所を見るためだ。
「こんな場所に、こんな立派な道路を造るなんて、日本のガバメントはバカだよな。」
下北半島縦貫道路に入るとIさんが言った。僕は、高速道路と規制速度の問題を話したかったのだけれども、英語力に不安があるので止めておいた。
さらに、みちのく有料道路を抜け、八甲田山へと向かった。山麓の風力発電用地を現地調査するためだ。調査の結果は不適だったが、それから後も、僕は彼らのビジネスパートナーだ。
彼らと別れた次の日、僕はバスで八甲田スキー場に行った。
旅の大きな目的は、どちらか言うとこっちにあった。
ロープウェーが上がるにつれ、青空がひろがり始めた。
天気が安定しないスキー場なので、なおさら青空がうれしい。
標高差650メートルのコースは、2本でお腹いっぱいになった。天気も悪くなってきたので、バスで酸ヶ湯(すかゆ)温泉にいくことにした。
翌日、青函連絡船『八甲田丸』を見学した。船内には、当時の様子が展示されている。次の写真は、ヤミ米を取り締まる警察官が、担ぎ屋を哀れみ、見逃すシーンらしい。
現代では、ノルマに追われて、些細な交通違反ばかりを取り締まる警察官の方が哀れだ。