大雪の夜

    午後になり、猛烈な勢いで雪が降ってきた。
    僕は会社が終わったら、ニセコひらふスキー場のナイターに行くことした。
    僕の職場から、ニセコひらふスキー場まではクルマで2~3分の距離だ。
    専用ではないが、スタッフ用のリフト券は自由に使うことができる。

    日中あった風は落ち着き、人は少なく、20~30cmほどの軽い新雪があった。
    僕は遊び半分、練習半分で、結局リフトが止まるまでひとりで滑った。

    午後9時ころ、いつも通勤で使う道の山道区間は新雪で覆われていた。先行車の轍はない。構わず入っていくと、200メートルほどでバンパーが跳ね上げる雪がフロントガラスに飛び散って視界を失った。そこで諦めバックで戻ろうとするが、緩やかな下り坂なので、タイヤがスリップして動かない。

    僕は、スコップで前輪付近の雪を掻き出し、タイヤチェーンを巻いて、バックで200メートルを戻った。国道周りのルートに変更し、ご近所さんのご厚意で使わせてもらっている駐車場まで戻った。そうしてそこでスノーモービルに乗り換えて、自宅に向けて走り出した。

    「雪が深いので、止まらないようにしよう」
    そう思いながら走り出してすぐ、目の前に樹木が現れ、あわててブレーキをかけた。
    あたりは真っ暗で、ライトの故障で遠くを照らせないので、進路を誤ったのだ。
    進路を確認して、リスタートしようとするが、キャタピラが空転して前に進まない。
    僕は、30分かけてスノーモービルの抵抗となっている雪を掻き分け、やっと脱出した。

    深いパウダースノーをスノーモービルで走るのは面白いが、わずかなミスで身動きがとれなくなる。スノーモービルは200キロを超えるので、持ち上げて向きを変えるのは、ひとりでは困難だ。
    慎重なアクセルとハンドルワーク、そしてときに大胆な体重移動で、僕は自宅までもどった。時間は午後11時を過ぎていた。

    翌朝、クルマの鍵がないことに気付き青くなった。スペアキーはない。クルマに戻ってみるが、中に鍵はない。

    きのうスノーモービルがスタックした辺りの雪を掻き分け鍵を探すが見つからなかった。

    明日、もう一度さがすことにしよう。

    追記

    BPレガシイのキーシリンダー交換落としたクルマの鍵は2日にかけて、しかもご近所さんの応援も借りて、雪を掘り起こして探したが見つけることはできなかった。
    小樽のディーラーに電話で聞くと、キーシリンダーの交換には、部品代と作業料で8万円ほどになるらしい。小樽までのレッカー料金を調べた所、5万円はくだらないようだ。業者に電話で聞いてみると、料金はさておき、冬場に長距離のレッカー移動はできないとのこと。つまり、春までクルマは動かせないということだ。

    僕は、ヤフオクで中古のパーツを落札し、日曜日にそれを組み付けた。そして月曜日には、出社することができた。

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