弱り目にたたり目
- 直したはずのポンプは翌日に停止し、また水が使えなくなった。
- 家と下界を繋ぐスノーモービルは、突然の故障で動かなくなった。
- 膝の靭帯損傷による歩行困難は、良くなる兆しが感じられない
ひとつでさえ生活が破綻しかねない災いが、 同時に3つも起こると、さすがに挫けそうになる。
そこで僕は、肩腱板断裂を手術してくれた札幌の病院に予約を入れた、膝の診断のためだ。あまりにも経過が良くないので、前十字靭帯はやはり断裂していて手術が必要になると僕は思った。だから、札幌に行く際には、そのまま入院できるように準備をした。
いざ手術となった時の問題は、スノーモービルが動かないので、退院した日からスキーかスノーシューでの歩行を余儀なくされることだ。水が出ないので、水を持ち込む必要もある。退院したときの歩行能力は、今よりずっと低くなるはずなので、病院に行く前に、水とスノーモービルを復旧させる必要があると考えた。
まず、脚を引きずってポンプ小屋を2往復し、修理の可能性を模索した。そして、問題が疑われるパーツをネットで注文した。しかし残念ながら、届くのは病院に行く予定日の後になりそうだ。
次に、スノーモービルの修理にチャレンジした。
雪を掘って作業スペースを作り、そこに潜り込んで 油圧センサーの動作をチェックした。センサーを切り離せば、エンジンは止まらず動き続けるので、春までその状態で乗ることにした。そうして、修理を終えた。
札幌へ出発
札幌の病院に向かう日、出発して5分と経たずにクルマのエンジンは突然に停止した。インジケーターは、見たことのない組合せで点灯している。
可能な修理を試みたが、動く気配はない。僕は、清く修理を頼むことにした。街からさほど離れていない場所で壊れたことを、幸いだと思いことにしよう。
修理工場の搬送車は、30分ほどでやってきた。ぼくは、自宅で降ろしてもらい、軽トラで札幌に行く準備を始めた。スパイクタイヤを履いたまま、雪のない札幌に行くわけにはいかないからだ。
30分ほどでスタッドレスタイヤに交換し、札幌に向けて走り出した。
クラッチ操作に不安があったが、左のブーツを脱げば、かなり楽に操作できることに気が付いた。その次に浮かんだのは「もし手術となったら、退院直後にこの車を運転できるか?」という不安だ。
どうせポンプの修理はまだ終わっていない。だから、もし手術を告げられたら、いったん自宅に戻り、ポンプを修理してから、あらためて札幌に行くことを決めた。
札幌で診察
中山峠を越え、予約時間ギリギリで病院に到着した。しばらく待たされ、膝の診察を受けた。ドクターは写真を見て、前十字靭帯が切れていないことを告げた。そして膝の動きと僕の反応を診て、内側側副靭帯の問題を指摘した。どうやら手術は不要で、保存的に治せるようだ。
ぼくは、ドクターが膝の可動を確認するときに脂汗を掻き、痛み止めの注射をするときに痛みの恐怖に悶えた。過去に後十字靭帯を損傷したとき、激痛で苦しんだ記憶のせいだ。
診察中、ドクターは僕の生活を聞いて、それを面白がった。そして、この程度の診察で脂汗を掻くのはマウンテンマンらしくないと説教した。おそらく僕の風体がマウンテンマンに見えるのだろう。ドクターの言うマウンテンマンは、社会との関わりを好まず山で暮らす人のようだ。
つづく肩の診断は、肩の可動を診て「問題ない。これで終了」とあっさりと終わった。胸椎の写真は撮られたのに、診察はしてもらえなかった。とにかく僕は、膝の手術をしないで済んだことが嬉しい。治療費としての出費を覚悟した10万円も使わずに済む。
診察を終えて
診察が終わると、ぼくは雪まつりの会場に向かった。雪まつりは昨日で終わっているが、残置した作品が見れるかもしれないと思ったからだ。しかし残念ながら、 会場に見るべきものは何も残っていなかった。
ところで、ぼくの軽トラは、都会の街角にマッチしない。交差点で止まると、しばしば視線を感じる。どちらかというと「なんじゃあれ?」と見られているようだ。
ポンプを修理
翌日、ポンプの部品が届いたので修理に挑戦することにした。暖気でさらに雪が減ったので、途中までスノーモービルで行くことにした。Uターンも切替しも困難なので、帰りはバックで戻る予定だ。
使う可能性のある道具はバックパックに詰めてある。 ぼくは注文したパーツを慎重に組付けていった。
動画の通り、やはり圧は上がらなかった。でも、給水側の配管をいじっているうちに少しずつ圧は上がるようになった。完全ではないが、ここまでで区切りとしよう。
自宅に戻り、蛇口をひねると水は出てきた。その夜、お祝いとして自宅で風呂に入った。
次々に降りかかる災難を何とか凌いで、ぼくは強くなった。次にどんなトラブルが来ても、きっと何とか対応することができるだろう。
さらに降りかかる災い
その次の日、自動車修理工場に行くと、大掛かりな修理が始まっていた。タイミングベルトが損傷していたらしい。僕がもっとも恐れていた故障が、大事なタイミングで生じたわけだ。
スバルの水平対向エンジンは、カムシャフトがエンジンの両端にあり、修理は簡単ではない。おそらく、脚の治療費として準備したお金は、クルマの修理代として消えることになるだろう。
次々と災難が降りかかることを「弱り目にたたり目」という。英語では”Misfortunes never come alone.”というらしいが、こちらの方がポジティブに感じられる。
不幸はまとめてやってくるものだから、挫けずに対応しよう。
そんなアドバイスなのだろう。