2012-13シーズンを最後に、チセヌプリスキー場のリフトは運行を停止した。
施設を所有する蘭越町は、公募の末、ガイドツアー(Hokaido Backcountry Club)を運営する会社に施設を売却することを決めた。
同時に蘭越町は、スキー場の敷地を所有する北海道と賃借権を承継するための調整を行った。
そして契約(施設譲渡・賃貸権の承継)の後
HBCは、事業計画にない全山貸切り型のCATスキーを開始し、客以外が敷地内へに立ち入ることを禁止した。
誰もが首を傾げるのは、提案された事業計画と、実際に行われている事業が異なることだ。
なぜ蘭越町は―
リフトの再可動を条件とせずに契約したのか?
運営を制御できない契約手法を選択したのか?
提案と異なるスキー場の運営を容認するのか?
不正が介入しがちな公有財産について、その適正な処分プロセスと適正利用のあり方を考えるケーススタディとしたい。
JRTは、スキースクールを主体とし、2020-21シーズンには3億円をリフトに投資する計画を蘭越町に提案した。しかしながら、実際には、全山貸切型のCATスキーを行っている
蘭越町は、ニセコエリアの好景気を知りながら、粗末な情報だけでスキー場施設の売却先公募を行った。そして二束三文でスキー場施設を売却した。
スキー場の土地は、北海道森林室が所管している。そして蘭越町は、北海道に責任を転嫁している。HBCもまた、北海道に賃料を払っているから問題ないという旨を主張している。
バブルの崩壊後、スキー人口は減少を続けた。 その一方、ニセコエリアは、雪質の良さが評価され、海外からのゲストが増加した。同時にリゾートとしてのポテンシャルが評価され、積極的な投資が行われた。
チセヌプリスキー場は、ニセコユナイテッドから離れており、規模も小さいことから、訪れる人は決して多くはなかった。しかしながら、良質なパウダースノーに恵まれていることから、根強い人気があった。また、ニセコ連山の入り口となるため、多くのバックカントリースキーヤーが入山するポイントとなっていた。
チセヌプリスキー場を運営する蘭越町は、施設の老朽化を理由にスキー場の売却を決定した。
スキー場の存続を求め、道内外から7000を超える署名が集まった。
それは蘭越町議会への「請願」となった。議会はそれを採択し、町に送付した。
しかし、2013-14シーズン以降、リフトの可動は停止した。
そして蘭越町は、プロポーザル方式による公募を開始した。
ただし、蘭越町は各社のプロポーザル提案を公開しなかった。
以下に示す文書は、請求を受けた後に町が開示した文書である。
2014年12月から2015年4月にかけて、蘭越町は5000万円で売却先を公募した。
人材派遣の上場企業UTグループは綿密な提案書を提出した。
UTグループての提案は、地域振興を勘案したすばらしいプランであった。
2015年5月、蘭越町の委員会で承認され、譲渡を前提としたすり合わせが開始された。
それから5ヵ月も経ってから、蘭越町は非常識な条件をUTグループに突きつけ、
まるで、追い立てるかのようなやり方でUTグループを撤退させた。
JRTの提案には、自然環境に配慮したエコスキー場をコンセプトとしたスキーリゾート作りを進めることが示された。そして収支予定表には2020-2021シーズンに3億円をリフトに投資することが記されていた。リフトを整備するまでは、CATによるスキースクールを収支の柱とすることが示された。なお、CATによるパウダースキーは、早朝限定とされ、収支予定表では極めて小さく扱われた。
再公募は短い機会で行われたものの、それでも6社が応募した。
蘭越町が役場でのヒアリングを6社に求めると、参加は4社に減った。
なお、蘭越町は各社の提案を評価するために評価項目を定めた。
その中には、次の評価項目が含まれていた。
蘭越町は、有限会社JRTトレーディングを売却先に決定し、2016(H28)年11月30日に事業譲渡契約を、2016(H28)年10月28日に土地の賃借権を承継する契約を締結した。
2017(H29)年1月1日、JRTは少人数の客に全山を貸切る方法でのCATスキーを開始した。
同時に、CATスキーの客以外がスキースロープに立ち入ることを禁止した。
なお、収益の柱として提案されたスキースクールは1度も行われていない。
JRTが、後志振興局森林室に対し、スキー場事業の譲渡予定を伝えた内容は、2018年9月7日、山内副町長にメールで送られた。転売が知らされていたにもかかわらず、金町長と山内副町長は、取材に対し、JRTが事業を継続する前提で受け答えした。また、プロポーザル内容と違うスキー場事業を容認していながら、町の予算でスキー場エリアのパトロールをはじめた。
チセヌプリの歴史的背景・ワイススキー場との比較・排他的運営が地域振興になるか
岩内スキー場(IWANAI RESORT)との比較・CATスキーの収益性