チセヌプリの賃借権は蘭越町にとって有用な資産だった
ニセコワイスCATスキーと島牧CATスキーのページに示すとおり、所有ができない山林に展開する多くのスキー場の多くは、索道下だけを賃貸している。一方、チセヌプリスキー場は、索道下だけでなく、区画全体が賃貸の対象となっている。当然、区画全体について賃料を払わなければならないが、その賃料はおそろしく安い。
おいしい公有財産
公有財産が賃貸される場合は、確実に民間よりも安くなる。特に事業用物件の場合において、公有財産の賃料は、民間の同等物件に比べて劇的に安くなる。これは、公有財産の賃貸に、収益性が勘案されていないからだ。民間の5分の1がひとつの目安となります。5分の1どころか、都心の一等地をタダ同然で借りてボロ設けをしている事業者も多数存在している。こうした公有財産の賃借権の多くは、それ自体が利権となっていると言える。
チセヌプリスキー場の敷地の賃料は、年間で約200万円、月あたりだと16万円である。月16万円の賃料では、ひらふ地区なら、せいぜい20坪程度の店舗しか借りられない。これは10席程度のカフェやレストランの規模である。
さらに8万6643坪の敷地に対する単価を計算すると、坪当たりで約2円、平米あたりなら58銭となる。面積あたりの賃料から見れば、タダ同然といっても過言ではない。
チセヌプリスキー場は負の遺産だったのか?
チセヌプリスキー場の扱いは、国民宿舎雪秩父改革等検討委員会で協議された。検討委員会の委員長は、金副町長(現町長)、副委員長は山内総務課長(現副町長)である。委員会の記録と山内副町長への取材によれば、蘭越町は、スキー場施設と敷地の賃借権を、町の振興に役立つ資産だとは考えていない。「リフトを町が撤去したら費用がかかるが、売れば費用がかからない」といった内容の話しは、特に山内副町長(当時総務課長)からは頻繁に聞かれる。金町長(当時副町長)も、山内氏を擁護するばかりだ。
しかしながら、リフトの撤去に期限が決められているわけではないので、地主である北海道から、撤去を急かされることはない。万が一、北海道からリフトの撤去を急かされたとしても「いつか」「そのうち」と言うだけで済む話しだ。
そのことは、山内副町長(当時総務課長)がスキー場の賃借権を移譲する契約書を作成した際に、「リフトの再開を目指す」という文言を織り込むことによって、「いつか」「そのうち」の逃げ道を設けたことを鑑みれば、彼らが知らないとは思えない。期限のない約束に実用的な拘束力はないのである。
現実として、同じニセコ観光圏のワイススキー場は、リフトを撤去せず、CATスキーが運用されている。リフトを撤去しないから、CATスキーの運営が可能になったのである。そして、新しいリフトを掛け替える了解を取り付けることができたのも、古いリフトが残っていたことが有利に働いたことは、容易に推察できる。つまり、老朽化し、動かなくなったリフトは、所在する土地の賃借権の価値によって、大きな資産となり得るのである。
そもそも、リフトがなくても、賃借権が継続し得ることを、金副町長(現町長)副委員長も、山内総務課長(現副町長)も知っていた。それなのに、リフトの撤去費と原状回復費用を、ことさら前面に出して、チセヌプリスキー場を負債扱いし、そうして、掟破りのディスカウントまで行って売却したことは、どうにも解せない。
区域全体の賃貸が許された背景
昭和42年に蘭越町がスキー場のために賃貸を出願し、土地所有者北海道はそれを了承した。この書類は、北海道が賃貸の承認を証するために作成した内部書類だ。出願人の資格信用契約履行の適否の欄には、「蘭越町が施行体であるので信用確実である。」と記されている。つまり、民間企業ではなく、地方自治体であることが、賃貸を承認した理由なのである。