春爛漫の洞爺湖マラソン
北海道の春を楽しむなら、ゴールデンウィークを過ぎてからがいい。新緑が深まるなか、梅と桜が同時に咲く北海道には、ソメイヨシノよりも色に深みある関山(かんざん)が多くある。それは花がたわわで、ソメイヨシノのずっと後まで目を楽しませてくれる。
5月20日、ぼくは洞爺湖を一周するマラソン大会に出場した。この大会にエントリーしたのは20年ぶりだ。20年前は、3時間を目標としたが、半分過ぎたところで体力が尽き、制限の5時間以内に完走することはできなかった。
当時、30歳を過ぎたぼくは、体力の衰えを感じ、健康のためにスポーツを始めていた。健康のためだけではない。ぼくにはレースに出るひとたちがカッコよく見えており、「俺も」という気持ちも大きかった。そうして、北海道内のいくつかのマラソン大会のほか、トライアスロンにも出走した。それも当時もっとも長い距離で争われたオロロンライントライアスロンに参加した。この大会は、今はもう開催されていない。
レースには出たいのだけれど、ぼくは練習が好きではない。洞爺湖マラソンも42.195kmにエントリーしたが、練習は数日前に2〜3キロ走っただけだ。いちおうの目標は、5時間以内に完走することだ。目的は、北海道でいちばん快適な季節を走ることにある。
レース中、ぼくはずっと最終グループを走りつづけた。10キロを過ぎると、歩いては走りの繰り返しになった。「ガンバレ」と声のかかるところは無理して走り、なんとか中間地点にはたどり着いた。でも、そこでぼくの脚は終わった。
目標は達成できなかったが、目的は果たした。快適な季節を体力の限界まで味わうことができたからだ。
走ることのできた前半のうち、印象にのこった場所は「えぼし岩公園」のあたりだ。
湘南のえぼし岩は海の上にあるが、洞爺湖畔のえぼし岩は丘の上に立っている。淡いピンクと濃いピンク、それから白い桜が満開で、緑の芝上にはたくさんタンポポが咲いている。