訴状

    第1 請求の趣旨

    1 被告■■■は、原告に対し、90万円を支払え、

    2 被告■■■は、原告に対し、90万円を支払え、

    3 被告モイワリゾーツオペレーションは、原告に対し、10万円を支払え、

    4 公益財団法人全日本スキー連盟は、原告に対し、10万円を支払え、

    5 訴訟費用は被告らの負担とする、

    との判決、ならびに、1ないし3項についての仮執行宣言を求める。

    第2 請求の背景

    1 当時者について

    (1) 原告野村一也(以下「原告」という)

    原告は、滑走歴約30年のスノーボーダーである。当該スキー場には、少なくとも5シーズンをシーズン券で利用しており、24-25シーズンも週に3回以上は練習に通った。

    原告は、2020年に当該スキー場で左脚内側側副じん帯の損傷し、2021年に右足踵骨の骨折した際の負荷により左膝に問題があって、2024-25シーズンからは、右足が前のグーフィースタンスをメインとした滑走方法から、左足を前にしたレギュラースタンスをメインとした滑走方法に変更していた。

    原告は、左膝に抱えた障害から、左膝への負荷や衝撃で2度とスノーボードができなくなるリスクを抱えていた。

    (2) 被告■■■(以下「M」という)

    Mは、1983年に東京大学農学部を卒業し、1992年以降を森林研究所(国立研究開発法人森林研究整備機構)に勤務していた。

    スキーアルペン競技者らが1985年に結成し、アルペンレーサーの強化育成を目的とする上山アルペンクラブ(山形県上山市)の幹事を務めている。

    SAJ(日本スキー連盟)競技データバンクによれば、2024-25シーズンは、5つのスキー選手権に出場した。ジャステムレーシング(北海道)に所属する。《甲11-1

    (3) 被告■■■(以下「S」という)

    SAJ(日本スキー連盟)競技データバンクによれば、2019年よりスキー選手権に参戦しており、2024-25シーズンは、5つのスキー選手権に出場した。室蘭スキー連盟に所属する。《甲11-2

    2 衝突事故が発生したスキー場について

    ア 所在地と名称
    北海道虻田郡ニセコ町字ニセコ448 ニセコモイワスキーリゾート

    イ 当該スキー場は、伝統的にアルペンスキーが盛んである。現在も当該スキー場の公認スキースクールでは、ジュニア向けのレーシングスキーレッスンが実施されている。

    ウ 当該スキー場の公認スキースクールの代表■■■は、国体4連覇を始め、数々のアルペンスキー大会で優勝実績がある。アルペンスキーヤーが滑走タイムを競うポテトカップが開催されている。

    3 公益財団法人全日本スキー連盟(SAJ)について
    定款の第3条(目的)には、「この法人は、わが国におけるスキー界及びスノーボード界を統轄し、代表する団体として、スキー及びスノーボード(以下「スキー等」という。)の普及及び振興を図り、もって国民の心身の健全な発達に寄与することを目的とする。」と記されている。

    第3 請求の原因

    1 衝突事故の発生について

    (1) 衝突事故発生日時
    2025(R7)7年2月2日午前11時ころ

    (2) 衝突事故発生場所
    当該スキー場メインバーン

    (3) 衝突事故当事者
    被告S、および、原告。

    (4) 衝突事故傍観者
    被告M

    (5) 衝突事故状況等 (事故当時の現場動画《甲8-1》で確認した内容)

    (6) 衝突事故当日、原告は、一人で、朝から当該スキー場を訪れ、第1ペアリフトに繰り返し乗車し、メインバーンで練習していた。

    (7) 衝突事故が発生したとき、原告は、リフトを降り、リフト降り場から50メートルほど下の位置で一旦停止した。その後、斜面を見上げ、上方からスキーヤーが来ていないことを確認して滑り出した。

    (8) 原告は、1)ヒールサイドと2)トーサイドを組み合わせたコンビネーションターンの繰り替えし練習をしていた。ターン後はスタンスが入れ替わるので、常にトーサイドターンが後となる。原告は、トーサイドターン後は身体が山側を向くので、無理なく上から滑走してくるスキーヤーを見上げ、十分な安全を確認しながら、ゆっくりとした斜滑降で、斜面の反対側に移動していた。

    (9) 原告は、3回目のターンを終え、山側を見上げると、ふたりのスキーヤー(SとM)がかなり速い速度で滑り降りてくるのを目視したが、下手に回避すると、スキーヤー2人の予想を外し、かえって危険を招く可能性があるので、敢えて向きを変えず、等速で移動を続けた。その際、1人目のスキーヤーに対しては、目線を送り、「貴方が避けろ」とシグナルを出し続けた。

    (10) スキーヤーSは、速い速度のまま、回避できずに原告に衝突した。

    (11) 原告は衝突地点からほど近いに転倒、Sは衝突地点から10メートル以上下方で転倒していた。

    (12) 原告は、Sの足から外れたスキーを拾い上げようとしたときに、Mが近寄ってきたので、ふたりがなぜ避けようとしなかったのかを訪ねた。

    (13) Mは、原告に対し「そっちが避けるべきだ」と「止まっているところにぶつかったわけじゃない」などと、まるで原告に過失があるかのように主張した。

    (14) 原告が「(過失割合が)100ゼロとは言っていない。原則論の話で、どっちが悪いんだよ?」と聞くと、Mは「お互いだって、割合いがあるでしょ」と言った。《甲8-2, -3

    (15) Sは「すみません」と誤ったが、Mは謝罪しないどころか、原告の過失を指摘し続けたため、原告は人身事故として処理することを宣言し、ふたりにその処理に付き合うことを促した。《甲8-2, -3

    (16) スロープ下まで降りると、原告は、Mがいないことに気づき、SにMに警察の現場検証に付き合わせるように求めたが、Sは原告の求めを拒絶した。

    (17) また、原告は、Sに身分署名の提示を求めたが、Sは頑なにそれを拒否した。その結果、原告は、SとMの名前さえ知らされなかった。

    (18) 同年2月6日、西さっぽろ病院で受診した。診断書には左膝関節捻挫との記載あり。左膝は年々悪化しており、原告本人も、本衝突事故における影響だけを抽出しての診断は困難であろうとの自覚はあった。

    (19) 同年3月10日、原告は、Sがスキーイベントの設営を手伝っているところを見かけ、声をかけた。しかし、Sは原告の呼びかけを黙殺した。

    (20) 同年同月同日、原告は、事故を担当した倶知安署の泉巡査部長に、SとMの名前と連絡先を求め、ようやくそれを知ることができた。

    (21) 同年同月同日、原告はSに電話した。Sは「お話しすることない」「弁護士にお願いした」と言うだけであった。

    (22) 同年3月12日、原告は、MとSが依頼した弁護士から受任通知(3月10日付)《甲2》を受け取った。その内容は、任意の交渉を拒絶し、Sの損害賠償請求と原告に対するSとMの債務不存在確認を裁判所に提起することが宣言されていた。

    (23) 同年3月25日、原告は、Sに電話をかけ、事故の損害を明確にするために事故状況に対するお互いの認識を確認するために、まず、速度について「速度差を自覚しているか?」と質問をした。それに対し、Mは、「、人と比べたことないんで、分かりません」「規制されたコースでは、もちろん自分たちは目いっぱい滑りますけども、それ以外はそういうことしません」と答えた。《甲4-1(音声全て), -2(音声抜粋), -3(音声反訳)

    (24) 原告は、Mの対応を問題視していることをMに伝え、音声記録をMに聞かせようとした。しかし、Mは弁護士に依頼したことを盾にして、紳士的な話し合いを拒絶した。

    (25) 同年3月28日、原告は、Mの弁護士から連絡が来なかったので、再度Mに電話した。そして、刑事告訴したのは、事故現場からMが逃げたので、Mの連絡先を知る目的もあったことを伝えた。それに対し、Mは、「弁護士の方とお話してください。」「今後、もう、あなたとはお話ししません。」「あなたとの話し合いを拒否します」などと言って、一方的に電話を切った。《甲5-1(音声全て), -2(音声抜粋), -3(音声反訳)

    (26) 同年3月31日、Mが弁護士を盾に話し合いを拒絶したことから、原告は、受任通知に記された弁護士に電話し、MとSの委任状の写しを送るよう求めた。

    (27) 同年4月5日、SとMは、モイワスキー場のスキー大回転レースに参加した。嵯峨は47秒49のタイムで完走し、三浦はDFと記録された。《甲6-4

    (28) 同年4月6日、同レース2日目終了後、原告は、Sに「損害賠償を請求するようなケガをしていたら、普通レースなんか出ませんよね?」と声をかけたが、Sは無言で車に乗り込み、その場を離れた。《甲7

    2 Sの不法行為

    ア 上方滑走者の注意義務

    (ア) 日本国内において

    平成7年3月10日最高裁判所第2小法廷判決/平成6年(オ)第244号が、スキー場において上方から滑降する者は、前方を注視し、下方を滑降している者の動静に注意して、その者との接触ないし衝突を回避することができるように速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務を負うものというべきであると判示した後、当該最高裁の判断を引用しつつ、具体的な判断がなされている事例が見受けられる。海外において

    (イ) 海外において

    「上方滑走者の注意義務」は、国際的にもスキー場における重要な義務として扱われている。原告SAA(全米スキー場協会)においては、1962年にスキーヤーが順守すべきルールを策定し、最初に上方滑走者の注意義務を記した。その後、何度か改定が加えられたのちの最新の2022年版においても10のルールのうち最初と2番目に「上方滑走者の注意義務」が記されている。原告SAAの「RESPO原告SIBILITY CODE(スキー場利用者の責任規定)」を示した黄色い表示は、北米のスキー場の目立つ場所に掲示されている。《甲12

    イ 事故映像(甲8-1および甲8-3)はSが高速で滑走する様子を記録しており、Sが上方滑走者の注意義務を怠ったことは、明白である。それゆえ、Sは、民法708条に基づき、原告に発生した損害を賠償する責任を負う。

    ウ Sの詐欺について

    Sの供述をもとに作成された実況見分調書《甲9》6ページ目には、Sが「相手の前を通ってかわせると思いましたが、ぶつかってしまいました。」と供述し、S自身の過失を認めている。

    一方、本訴訴状においては、S自身の過失ないし注意義務に触れることなく、原告の注意義務のみを主張している。この主張方法は、裁判体を欺き、原告を錯誤させ、不当な損害賠償を得ようとしていることは明白である。それゆえ、本訴におけるSの損害賠償請求は、現在進行形の詐欺罪(刑法246条)に該当する。それゆえ、Sは、民法708条に基づき、原告に発生した損害を賠償する責任を負う。

    3 Mの不法行為

    事故当時の映像に各当事者の位置マークを追加した動画《甲8-3》は、Mが、Sを追走する様子が記録されている。その内容は、少なくとも、Mの視界には、SとMとの衝突が入っていたと推定するべきであるといえる。

    一方、Mは、原告に対し、「どういう事故だったか、見てないんで、何とも言えない」と伝えている。《甲4-3の4ページ下段

    Mの「見ていない」との主張は、動画《甲8-3》の状況から乖離していることから、Mの虚偽を推察することが当然である。その場合、Mは、Sを過失責任ひいては賠償責任から逃したこととなる。賠償義務から逃がすことは、金銭を請求することと同等の行為であることから、Mの行為は恐喝とみなすべきである。

    また、事故後、Mの原告に対する対応は、非紳士的であり、当事者としての責任回避をしていることは明白であり、信義誠実の原則(民法1条2項)に反していることから、Mは、民法708条に基づき、原告に発生した損害を賠償する責任を負う。

    4 被告モイワリゾーツオペレーションの不法行為

    追って、弁論にて明らかにする。

    5 公益財団法人全日本スキー連盟の不法行為

    追って、弁論にて明らかにする。

    第4 証拠方法

    証拠説明書に記載のとおり

    以上

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