陳情趣意書

2021(R3)年2月12日

蘭越町議会議長 冨樫 順悦 殿

陰影
甲 陳情者
北海道磯谷郡蘭越町富岡1035-3
野村 一也
電話番号 090-4836-4467

一 チセヌプリスキー場が売却されるまでの推移

  1. 国民宿舎雪秩父の改築と併せ、チセヌプリスキー場の売却等を検討するために、「国民宿舎雪秩父改築等町内検討委員会」(以下「検討会」という)が設置された。
  2. 当時副町長金秀行(現町長)は、検討会の委員長を務めた。≪甲1
  3. 当時総務課長山内勲(現副町長)は、検討会の副委員長を務めた。≪甲1
  4. 2014(H26)年12月8日から2015(H27)年4月30日までの144 日間、蘭越町は第1回目の公募を実施した。≪甲2
    1. 2015年4月2日の応募当時JASDAC上場、同年秋に東証1部上場するUTホールディングス株式会社(以下「UTグループ」という)は、32ページに及ぶ提案書を添えて、公募に応募した。そして、山内勲らは、UTグループとの交渉を始めた。≪甲3≫≪甲4
    2. 山内勲らは、UTグループに対し、公募条件にない連帯保証人を求めた。≪甲7≫≪甲8≫≪甲9≫≪甲10≫≪甲11≫≪甲12
    3. 2015年10月18日、UTグループは、公募条件変更(連帯保証人追補)に対し、来庁の上、蘭越町に譲歩を求めた。≪甲41
    4. 2015年10月20日、蘭越町はUTグループの譲歩要請のうち譲渡金額の要請を断った。≪甲7
    5. 2015年10月22日、UTグループは、eメールにおいて、譲歩を求める理由が公募条件の変更に起因することを明記したうえで、譲渡金額の軽減等を再要請した。≪甲8
    6. 2015年10月23日、山内勲は、追加の支援(譲渡金額の軽減等)を断ること、および、譲渡の協議を白紙撤回することを起案した。そして、金秀行もその起案を承認した。≪甲9
    7. 2015年10月26日、蘭越町は、UTグループに対し、譲渡金額の減額等の不承諾を回答するとともに、応募の白紙撤回を促す文書を送付した。≪甲10
    8. 2015年11月2日、UTグループは、応募の白紙撤回を申し出た。≪甲11≫≪甲12
  5. 2015(H27)年11月27日、山内勲は、正月明けの1月29日を公募期限とする第2回目の公募を起案し、金秀行はこれを承認した。≪甲13
  6. 年の瀬が迫る2015(H27)年12月18日から年明けの2016(H28)年1月29日にかけての43 日間、蘭越町は第2回目の公募を実施した。≪甲14
  7. 第2回目公募が応募者なく終了してから32日後の2016(H28)年3月2日、山内勲は、売却金額を5分の1に引き下げることを起案し、金秀行はこれを承認した。≪甲15
  8. 2016(H28)年3月7日から同年4月22日までの47日間、蘭越町は第3回目の公募を実施した。≪甲16
  9. 第3回目の公募には、有限会社JRTトレーディング(以下「JRT」という)を含む計6社の申し込みがあった。≪甲17≫≪甲18≫≪甲19
  10. 2016(H28)年5月11日、山内勲は、「国民宿舎雪秩父改築等町内検討委員会の報告について(第15回)」を起案し、「チセヌプリスキー場譲渡にかかる申込概要一覧」を作成した。そして、JRTが、20-21シーズンに索道施設への3億円の投資を事業予定表に記載していたにもかかわらず、「チセヌプリスキー場譲渡にかかる申込概要一覧」において、山内勲は、単に「再開を目指す」という文言に留めた。≪甲19
  11. 2016(H28)年5月13日、山内勲は、「チセヌプリスキー場譲渡希望者からのヒアリング実施について」を起案した。≪甲20
  12. 2016(H28)年5月23日、山内勲は、「チセヌプリスキー場譲渡希望者からのヒアリング結果について」を起案した。≪甲21
  13. また山内勲は、「契約者の地位の承継に関する契約書」の草案を作成し、第3条を「(現在休止している索道事業について、早期に)再開を目指す」という条文とした。≪甲22≫≪甲23≫≪甲24
  14. 2016(H28)年10月28日、蘭越町は、JRTと事業譲渡契約を締結した。≪甲25
  15. 2016(H28)年10月28日、蘭越町と北海道、JRTとJRTの連帯保証人は、契約者の地位の承継に関する契約を締結した。なお、JRTの連帯保証人は、8枚の提案書中の2ページに渡って詳細が示されたペック・クリストファー・マイケル氏から、MMP Resources Japan 株式会社に置換えられた。≪甲23≫≪甲24≫≪甲17
  16. 2016(H28)年11月11日現在までに、JRTは、提案書にない1日全山貸し切り型のCATツアーだけを開催し、客以外が敷地内に立ち入ることを禁止した。その一方、JRTが提案書で主力事業としていたスキースクールは、1度も開かれたことはない。≪甲26≫≪甲27≫≪甲28
  17. 2020年4月6日、JRTは、facebookページ@hokkaidobackcountryclubにおいて、1基400万円から600万円で購入可能な簡易リフトをテストする様子の写真と次の文を含む文章を投稿した。≪甲29≫≪甲30≫≪甲31≫≪甲32
    (原文)Our business plan is based on sustainability so the first step is
    trying out a cost effective lift option. It was a very long two weeks of
    set up and testing and it still needs tweaking to say the least but we plan
    to be running a rope tow every year from March 7th until the end of the
    season.
    (甲訳)私たちのプランは持続可能をベースとしているので、最初のステップは、費用対効果の高いリフトオプションを検討することだ。毎年3月7日からシーズン終わりまでロープトゥを運営する。
  18. 甲が設けたfacebookページにJRTの代表カナハン氏が意見することがあったので、甲は、カナハン氏に次の質問をした。しかし、カナハン氏は、甲の質問に回答しなかった。≪甲33
    (原文)The question #2
    You have not answered my question. I’m asking whether you still planning to
    invest 300 million yen in a lift or not. Your proposal says you invest 300
    million yen in a lift the 20-21 season. That is one of the reasons why
    Rankoshi-cho decided to contract with you.
    (甲訳)あなたは私の質問に答えていません。 私が聞いているのは、あなたがリフトに3億円の投資をする気があるのかどうかです。
    あなたは、20-21シーズンにリフトに3億円の投資をすると提案しました。 それは、蘭越町があなたと契約することを決めた理由の一つです。
  19. 2019(R1)年3月15日、甲は、蘭越町長に対し、蘭越町がチセヌプリスキー場を売却した際における次の3つを含む公文書の開示を請求した。
    1. 購入を申し出た事業者の提案文書
    2. 売却先の選定理由またはそのプロセスを示す文書
    3. 蘭越町が売却先を決定する際に作成した稟議書。ただし、決定に関わった担当者の名前がわかる文書であること

    甲34

  20. 2019(R1)年3月29日、蘭越町長は、甲の請求の一部非開示を決定した。なお、公文書一部開示決定通知書中「開示しない部分の概要及び理由」欄の概要には、「当該法人等の競争上の地位が不当に損なわれると認められる箇所及び選定に係る検討に支障があると認められる箇所」と記してあった。※当該決定により開示しない部分(会社名、代表者、住所、資本金、運営提案等、収支予定表、連帯保証人)が黒塗りとされた。

    甲34≫≪甲19≫≪甲20≫≪甲21

  21. 2020年5月27日、甲は、金秀行と山内勲を取材し、事前に文書で伝えていた次の質問を行った。
    JRTが事業計画書で3億円の投資を事業計画として示したにもかかわらず、その投資を行われない場合について尋ねます。
    1. JRTが簡素なロープトウを設置することによって公益性を主張し、引き続き全山貸切り型のCATスキー主体の運営を継続する場合、町はそれを容認するのか。
    2. JRTが全山貸切り型のCATスキー主体としながら、朝1-2回程度のCATによる搬送サービスを提供することで公益性を主張する場合、町はそれを容認するのか。
    ふたつの質問に対し、金秀行と山内勲は、いずれも容認することを明言した。

    甲22≫≪甲23

  22. 2020(R2)年10月29日、甲は、蘭越町に対し、次のふたつを含む公文書の開示を請求した。
    1. チセヌプリスキー場譲渡に係る申込概要一覧
      ただし、「運営提案等」の項目が黒塗りされていないもの。なお、提案事業者名は黒塗りで構わない。
    2. 2回目の公募において、リフトの修復再開を提案したJRT以外の会社の提案書。ただし、当該法人等の競争上、若しくは、事業運営上の地位、または、社会的な地位が不当に損なわれる可能性を排除するために、当該法人等の名称に限っては非開示とされても、公開請求者はこれを容認する。

    甲35≫≪甲36

  23. 2020(R2)年11月11日、蘭越町長は、甲の上記ふたつの開示請求の非開示を決定した。開示しない理由は、「蘭越町情報公開条例第9条第1号に該当」とされた。≪甲37

二 入札談合行為の疑い

  1. 「チセヌプリスキー場譲渡に係る申込概要一覧」について

    甲は、2020(R2)年10月29日の公文書開示請において、「ただし、当該法人等の競争上、若しくは、事業運営上の地位、または、社会的な地位が不当に損なわれる可能性を排除するために、当該法人等の名称に限っては非開示とされても、公開請求者はこれを容認する」と開示の範囲を限定した <一の22の2>。これは、蘭越町が、非開示の理由として、蘭越町情報公開条例第9条第1号の規定を持ち出さないためである。

    蘭越町情報公開条例

    第9条 実施機関は、次の各号に該当する情報については、当該情報の記録されている公文書の開示をしないことができる。

    (1) 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報及び事業を営む個人の当該事業に係る情報であつて、開示することにより、当該法人等及び当該事業を営む個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が不当に損なわれると認められるもの。

    甲が、社名のみを黒塗りとして、それ以外の開示を求めていることは明らかであり、蘭越町が「蘭越町情報公開条例第9条第1号に該当」として、全てを非開示としたこと<一の22>は、不誠実である。

  2. 「チセヌプリスキー場譲渡に係る申込概要一覧」について

    この書類は、応募者の提案内容を一覧することのできる唯一の書類である。蘭越町が比較対象情報の一切合切を黒塗りにすることは、選考が公正になされたのか否かを、民主的に判断することを不可能とするものであり、町民としてと容認できない。

    なお、甲が金町長と山内副町長を取材した際において、ふたりはJRTがリフトに3億円の投資をする提案がありながら、実質的にその投資がなされなくても問題視しない旨を回答した。それは、いったい何を材料として、譲渡先を選定したのかについて、疑念を抱かせる回答だと言わざるを得ない。選定に『特別な事情』が働いたのではなく、JRTの提案が、他の事業者の提案に比べて優位性があったとして選定されたのであれば、蘭越町は「チセヌプリスキー場譲渡に係る申込概要一覧」を公開すべきである。

  3. 「リフトの修復再開を提案したJRT以外の会社の提案書」について

    この書類を、求めるのは、JRTの提案書と比較することによって、譲渡先の選定が公正に実施されたか否かを評価するためである。選定に『特別な事情』が働いたのではなく、JRTの提案が、他の事業者の提案に比べて優位性があって選定されたのであれば、蘭越町は「チセヌプリスキー場譲渡に係る申込概要一覧」を公開すべきである。

三 金秀行と山内勲にかかる背任の疑惑

甲には捜査権がないので、全ての嫌疑を示すことはできない。しかしながら、公文書と甲の取材だけを証拠としても、金秀行と山内勲には、蘭越町の資産を不当に安い価格で売却し、蘭越町に損害を与えた背任行為が疑われる。

  1. 背任の根拠

    1. 不当な排除

      第1回公募において、UTグループが、正当理由があっての値引き要請をしたにもかかわらず、山内勲らは、これを断ることで、UTグループの撤退を促した。≪甲7≫≪甲8≫≪甲9≫≪甲10≫≪甲11≫≪甲12
    2. 値下げのためのアリバイ工作疑惑

      第1回目公募が144日間の公募期間を設定したのに対し、第2回目の公募は、わずか43日間が設定された。しかも、年末年始を挟んでおり、大規模な事業を検討させるには、明らかに短すぎる。また、第2回目の直後に値下げが行われたことからも、山内勲らが、値下げの理由をつくる目的で実施したことを疑わざるを得ない。≪甲13≫≪甲14≫≪甲40
    3. 理由のない大幅値下げ

      ニセコエリアの地価の高騰が明らかであるにもかかわらず、第3回目公募に先立って山内勲は当初価格の5分の1の価格への値下げを起案した。しかしながら、極端な値下げを行う根拠は何ら明らかとされていない。≪甲15
    4. 公務員服務規程上の問題

      第3回目公募期間において、山内勲がリフトの再開に関する条件を等しく伝えていない疑いがある。甲22≫≪甲23
    5. 入札談合等関与行為の可能性

      蘭越町は、2度の情報公開請求において、JRT以外の提案内容をすべて非開示とした。これは、入札談合等関与行為防止法の規定する「職員による入札等の公正を害すべき行為」の存在を疑わせるものである。
    6. ルーズな契約書の作成

      JRTは、収支予定表において、2020-21シーズンに3億円の投資を索道設備費用として提案したにもかかわらず、山内勲はこれを「リフトの再開を目指す」という抽象的な文言だけを選び、「契約者の地位の承継に関する契約書」に織り込んだ。≪甲24
    7. 提案とは異なるスキー場運営を擁護

      2020年5月27日の取材において、金秀行と山内勲は、JRTを擁護するばかりであった。なお、取材に先立って、質問内容は予め文書で蘭越町に伝えていた。そのなかに次のふたつの質問があった。
      1. JRTが事業計画書で3億円の投資を事業計画として示したにもかかわらず、その投資を行われない場合について尋ねます。
        1. JRTが簡素なロープトウを設置することによって公益性を主張し、引き続き全山貸切り型のCATスキー主体の運営を継続する場合、町はそれを容認するのか。
        2. JRTが全山貸切り型のCATスキー主体としながら、朝1?2回程度のCATによる搬送サービスを提供することで公益性を主張する場合、町はそれを容認するのか。

      そして、金秀行と山内勲は、上ふたつも容認することを明言した。 甲22≫≪甲23

    8. 北海道(後志振興局森林室)への責任転嫁

      山内勲は、甲の取材に対し、北海道の森林室が転貸ができないと言ったとして、蘭越町が、転貸や指定管理者制度でなく、賃借権の承継を選んだことと、UTグループに後から連帯保証人を求めたことを正当化している。

      しかしながら、山内勲ら蘭越町が示すその根拠は、山内勲が起案した蘭越町の内部文書≪甲5≫に過ぎない。≪甲5≫は、後志振興局森林室藤田氏と山内勲ほか1名との打合せ内容を記した文書であるが、同席した後志総合振興局森林局藤田管理係長(当時)の承認がないので、山内勲の主張示す証拠にはならない。

      仮に山内勲が≪甲5≫に記した内容が事実だったとしても、そこに示された公有財産の転貸に係る内容に関しては、山内勲ら蘭越町職員と、同席した後志振興局森林室藤田氏の単なる不勉強を示していると言わざるを得ない。なぜなら、賃借権を蘭越町が保有したままでのスキー場を運営する手法は、極めて一般的なスキームであるからだ。そして、北海道が転貸を許可しないことなどあり得ない。以下、その理由のうち3点を示す。

      1. 転貸等の禁止の条文には、「甲の承認を得ないで」転貸することができないと示されているに過ぎない

        次に示す通り、転貸は禁止ではなく、甲の承認を得れば可能であった。

        (転貸等の禁止)
        第8条 乙は、甲の承認を得ないで、貸付物件を転貸し、又は貸付物件上に所在する自己の施設に賃借権その他使用又は収益を目的とする権利を設定してはならない。

        北海道と蘭越町との道有林野賃貸借契約書

      2. 北海道と蘭越町との道有林野賃貸借契約は、更新ではなく、1年毎の再契約なので、事前協議を前提にすれば、再契約時に契約内容を変更することが可能。

        借地借家法に縛られた住宅の賃貸借契約が更新を前提としていているのに対し、事業用物件は更新を前提とする必要はない。そして、北海道と蘭越町とで締結されていた道有林野賃貸借契約も、1年毎の再契約、つまり毎年、新たな契約は刷新されるものなので、事前に協議すれば条文の変更が可能である。

        (賃貸借期間)
        第3条 貸付物件の賃貸借の期間は、平成28年4月1日から平成29年3月31日までとする。
        2 乙は、貸付期間満了後において引き続き貸付物件を使用とするときは、貸付期間満了の日の30日前までに、その旨を書面により甲に通知さひなければならない。

        北海道と蘭越町との道有林野賃貸借契約書

      3. 実際、北海道が転貸を認めたケースが存在する。
        1. 2019年08月08日に発表された、オリックス株式会社が建設に着手した北海道函館市南茅部地域で地熱発電所「(仮称)南茅部地熱発電所」は、国の土地を函館市が賃貸し、函館市はその土地をオリックスに転貸した。
        2. 北見市スキー場は、北海道の土地を北見市が賃貸し、北見市はその土地をスキー場運営会社に転貸することによって運営されている。
        北海道が連帯保証人を求めた理由

        初回公募において、UTグループが反発したのは、蘭越町が後から連帯保証人を要求したからである。そして、北海道が蘭越町に連帯保証人を要求したのは、蘭越町が賃貸権を保有し続けるのではなく、賃貸権を譲受人に承継することを選択したからだ。

        もし、蘭越町が指定管理者制度または転貸を選択したなら、北海道が連帯保証人を要求することはない。地方自治体は、民間企業のように簡単に倒産しないからだ。

        北海道と蘭越町との賃貸借契約について、すこし関連書類を掘り下げてみる。

        チセヌプリCATスキー中、「区域全体の賃貸が許された背景」にも示した通り、北海道が蘭越町の賃借申請を承認を証するために作成した内部書類「貸付出願林野調査表」≪甲38≫には、「蘭越町が施行体であるので信用確実である。」と記されている。

        道有林野賃貸借契約書

        そして、賃貸契約書≪甲39≫に連帯保証人はない。つまり、民間企業ではなく、地方自治体であることが、北海道が賃貸を承認した理由である。そして、蘭越町が賃借権を手放して、民間企業に賃借権を承継しようとしたから、北海道は連帯保証人を求めたのである。

  2. 金秀行と山内勲が蘭越町に与えた損害の内容

    金秀行と山内勲が蘭越町に与えた損害は、売却価額の不当引下げだけではない。3回目公募の公正さへの疑惑と併せて、譲渡を受けたJRTが蘭越町への提案とは異なる事業を展開している事実だ。

    先ず、UTグループが提案していた内容≪甲3≫の抜粋を以下に示す。

    1. 蘭越本社の設置、社長ほか従業員の移住、町民の新規採用
    2. 通年型リゾート運用のためのサマーアクティビティの実施
    3. 子供向け体験型研修、企業社員・自治体職員向け研修事業
    4. Tバーリフト/ロープリフトとCATの組み合わせによるスキー場運営
    5. リフト撤去・Tバーリフト/ロープリフトほか、合計3.75億円の投資
    6. 現実的な客単価(リフト代2,000円、CAT15,000円)で、年間9万人超の集客
    7. 蘭越町民に対する優遇(年間フリーパス・1日料金半額・小学生無料)
    8. 蘭越町ニセコ連峰歩くスキー大会への全国からの集客
    9. 蘭越町の人口を超える事業規模(提案当時の在籍者8,168名)を生かした蘭越町特産物の販売
    10. 蘭越の農産物の加工開発、第6次産業化への寄与
    11. 販売施設の強化・地元食材提供飲食施設への投資

    一方、JRTの提案内容≪甲17≫は、極めて大雑把である。しかも、わずか8枚の提案書のうち2枚が連帯保証人の説明に充てられている。このことは、UTグループと連帯保証人の問題で決裂したことが事前に伝えられ、JRTが連帯保証人に重点を置いて作成されたことが推察できる。

    そして、JRTが実施している事業については、次の問題がある。

    1. 主たる事業として提案したスキーレッスンは実施されていない。
    2. 早朝限定であったはずのCATスキーは、極めて少人数を客とする全山終日貸切り型の運用がなされている。
    3. リフトに3億円の投資をすることを事業予定表で示していたにもかかわらず、簡易リフトを春スキーのシーズンにだけ仮設することにすり替え実施されている。
    4. 国定公園であるにもかかわらず、JRTがすべてのスロープへの侵入を禁止しているため、他のツアー事業者との軋轢が生じている。JRTとニセコ町のツアー事業者間において、民事訴訟に発展したケースもある。そして、JRTの排他的な運用は、一般のバックカントリースキーヤーらがチセヌプリを敬遠する材料にもなっている。

    つまり。提案された事業が行われず、提案にない事業だけが行われることによって、地域振興どころか、来訪さえ敬遠される事態が引き起こされている。これは売却価額の不当引下げとは別の損害である。

    甲22≫≪甲23≫に示した通り、金秀行と山内勲は、JRTが提案と異なる事業を行うことを容認するばかりであった。金秀行と山内勲には、蘭越町に損害を与えた上、さらに現状を容認する『特別な事情』があるようなので、その調査を併せて求める。

    以上